Ethereum のトークン規格を理解する
重要ポイント
Ethereum のトークン規格とは?
Ethereum とそのLayer 2ネットワークには、性質も用途も異なる暗号資産のトークンが何百万種類も存在します。開発者が 1 つずつ何時間もかけて組み込まなくても、dApp のエコシステム全体でトークンを滞りなく扱えるようにするには、どうすればよいのでしょうか。利用者は、何時間も資料を読まずにトークンの主な性質を把握できるのでしょうか。
そこでトークン規格の出番です。
このひな形と規則の集まりが、Ethereum のエコシステム全体でトークンの相互運用性を支えます。つまり dApp は何千ものトークンを個別に扱う必要がなく、共通するいくつかの規格に対応するだけで済みます。エクスプローラーの皆さんにとっては、そのトークンがどの規格に基づくかを見れば、Ethereum 上での基本的な働きが分かるということです。
トークン規格が定めるのは次のことです。
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トークンのスマートコントラクトをどう書くべきか。
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その種類のトークンがすべて備えるべき共通の機能。これがあるので、どの dApp も扱い方が分かります。
現在、Ethereum ではよく使われるトークン規格が 3 つあります。

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ERC-20:かんたんに交換できる(代替可能な)トークンの規格。
例:USDC や UNI のトークン。
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ERC-721:唯一無二の(代替不可能な)トークンの規格。
NFTと呼ばれます。例:Bored Ape Yacht Club の NFT。
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ERC-1155:代替可能なトークンと代替不可能なトークンを、ひとつのコントラクトで扱う規格。
例:Web3 のビデオゲームの中のアイテム。
ここで「代替可能性とは、そもそも何だろう」と思ったかもしれません。
Ethereum のエコシステムでの重要性を理解するため、この経済学の概念を見ていきましょう。
代替可能性と代替不可能性
「代替可能性」は経済的な資産や財の性質で、2 つの特徴を示します。
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取引するとき、単位どうしを価値を変えずに入れ替えられる。
(1 ドルは別の 1 ドルと交換でき、25 セント硬貨 4 枚とも、5 セント硬貨 20 枚とも交換できます。)
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分けたとき、細かくなった部分も基本的な性質を保つ。
(1 ドルを 25 セント硬貨 4 枚に分けても、価値の保存にも買い物にも使えます。)
代替可能な資産の例には、石油、法定通貨、国債、企業の株式などがあります。こうした唯一性のない資産は、かんたんに交換でき、分けられます。

反対に、「代替不可能性」が示すのは次のことです。
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その資産は他と区別できる固有の性質を持ち、独自の価値がある。
(ゴッホの絵と新進の現代作家の絵では価格が違います。見た目、希少さ、技量、そして作者の評価が異なるからです。)
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分けると基本的な性質が損なわれる。
(絵を 4 つに切ると、それぞれは似ても似つかず、価値もばらばらになります。絵に込められた意図も失われます。)
代替不可能な資産の例には、不動産、美術品、デジタルアイデンティティ、各種の証明などがあります。固有の性質を持つため、交換も分割も難しくなります。

代替可能性で迷ったら、「交換と分割はどれくらいかんたんか」と考えてみましょう。難しければ、たいてい代替不可能です。
Ethereum は「世界経済の決済レイヤー」になることを目指しています。代替可能な資産と代替不可能な資産の両方を扱えることで、従来の資産クラスをオンチェーンで表せるようになり、新しい資産クラスを生み出す道も開けます。
規格とトークンの機能
Ethereum で新しいトークンのコントラクトを公開するとき、作り手は既存のトークン規格からひとつを選びます。これにより、資産の総供給量、別のウォレットへ移せるかどうか、どんな情報を持てるかといった初期の性質(機能と呼びます)が決まります。

たとえば ERC-20 では、次のような機能が使われます。
1. totalSupply: ERC-20 トークンの総供給量を定めます。
トークンの総供給量は、価値や配分といった重要な性質を左右します。
2. balanceOf: 指定したアドレスのトークン残高を調べます。
サービスやプラットフォームが、依頼されたトランザクションを実行する前にウォレットの残高を確認するのに役立ちます。
3. transfer: 自分のアドレスから他のアドレスへトークンを送ります。
ウォレットから別のウォレットへ暗号資産のトークンを送るたびに、この機能を使っています。
4. approve: あるアドレス(通常はスマートコントラクト)が、指定した額まで自分のウォレットに代わって取引することを許します。
この機能を使うと、プラットフォームやサービスに一定の資金の使用とトランザクションの実行を任せられます。
5. allowance: 使用者がウォレットからいくらまで動かせるかを調べます。
プラットフォームはこの機能で、承認された総額と、手動の署名なしでトランザクションを実行できるかどうかを確認します。
トークンの発行の手順が標準化されることで、Ethereum のエコシステムにコンポーザビリティが生まれます。たとえば分散型取引所(DEX)を作る開発者は、ERC-20 規格に沿ったトークンならどれでも対応できます。どれも同じように振る舞うからです。上場する銘柄ごとに個別の対応を組み込む必要はありません。
同じように、NFT マーケットプレイスを作る人は、ERC-721 と ERC-1155 の規格に対応させるだけで、Ethereum 上のすべての NFT を扱えます。
トークン規格、代替可能性、機能が分かったところで、Ethereum の主要な 3 つの規格の使いどころを見ていきましょう。
ERC-20:代替可能なトークン

ERC-20 は、代替可能なトークンのコントラクトを作るための規則を定めたトークン規格です。
ERC-20 のトークンは、ミームコインから分散型の市場での支払い手段まで何にでもなります。多くの場合、次の 4 つのどれかに当てはまります。
1. ユーティリティトークン: アプリやプラットフォームのエコシステムの中で特定の役割を果たします。
例:Chainlink(LINK)は、市場価格などの現実世界のデータをスマートコントラクトに届ける事業者への支払いに使われます。
2. ガバナンストークン: プラットフォームのガバナンスの決定に投票する権利を保有者に与えます。
例:Ethereum Name Service(ENS)の保有者は、ドメインの登録プロトコルを更新する提案に投票できます。
3. ステーブルコイン: 安定した価値を保つよう設計され、通常は米ドルと等価です。
例:Tether(USDT)、USD Coin(USDC)、そして Sky の USDS のような新しいもの。
4. セキュリティトークン: 企業の株式のように、裏づけとなる資産の所有権を表します。
例:トークン化された投資ファンド。大手の運用会社が 2024 年からオンチェーンで発行し始めた MMF などです。
ひとつのトークンが複数に当てはまることもあります。たとえばガバナンストークンが、プラットフォームの中で何らかの用途を持つこともあります。
ERC-20 のトークンは、Uniswap のようなDEX でも、Binance や Coinbase のような中央集権型取引所でもかんたんに買えます。
ERC-721:代替不可能なトークン

ERC-721 は、Ethereum の利用者が代替不可能なトークンを作ったり使ったりするための規則を定めた規格です。作られた NFT が唯一無二であることを、誰でも検証できる形で保証します。
ERC-721 のトークンには、どんな使い道があるのでしょうか。
1. 資産の所有: ERC-721 のトークンは、デジタルと現実世界の唯一無二の資産の所有権を表すのに広く使われています。たとえばこのエクスプローラーハンドブックのエントリーには、番号のついた 100 部が用意されており、読むだけでなく所有できます。デジタルの本棚に並ぶ一冊のようなものです(上部の金色の「Collect Entry」(エントリーを収集)ボタンからミントして所有できます)。Bankless Academy の「Datadisk コレクティブル」も同じ仕組みです。
2. 定期購読と会員権: クリエイター、アーティスト、クラブ、企業はすでに、定期購読やイベントのチケット、会員権に NFT を使っています。NFT の唯一性は検証できるので、限られた発行数の一つひとつが個人と結びつきます。
3. ロイヤルティ特典: Starbucks は 2024 年 3 月まで Odyssey というロイヤルティプログラムを運営し、会員はクエストを達成して NFT を手に入れ、デジタルや現実世界の特典と交換できました。他にも多くのブランドが、利用者が好きなときに交換したり売ったりできるロイヤルティ特典として NFT を提供しています。
4. 身元と証明: ERC-721 のトークンは、改ざんできない身元証明や資格証明を作るのに使えます。デジタルの身元や証明書が ERC-721 のトークンなら、所有を証明するのはかんたんで、書類を偽造して悪用するのはほぼ不可能になります。
ERC-721 のトークンを手に入れるには、OpenSea のような NFT マーケットプレイスでアカウントを作り、出品されている NFT を買いましょう。マーケットプレイスの詐欺から身を守るため、Web3 セキュリティのレッスンも受けておいてください。
ERC-1155:代替可能なトークンと代替不可能なトークン

ERC-1155 はマルチトークン規格とも呼ばれ、ERC-20 と ERC-721 の考え方を合わせたものです。代替可能なトークンと代替不可能なトークンの両方を扱えるコントラクトを書けます。利用者の体験が大きく変わるわけではありませんが、プラットフォームの機能を効率よくまとめられます。たとえば、代替可能なゲーム内通貨と代替不可能なゲーム内アイテムを、ひとつのコントラクトで公開できます。
この規格では、半代替可能なトークンも作れます。条件によって代替可能にも代替不可能にもなるトークンです。たとえばトレーディングカードのコレクションでは、同じ希少度のカードどうしは代替可能(入れ替えられる)で、希少度の違うカードは代替不可能(入れ替えられない)にできます。
ERC-1155 では複数の種類のトークンをまとめて送るバッチ処理もでき、利用者のガス代を抑えられる可能性があります。
エクスプローラーハンドブックの長いエントリー「トークン規格を理解する」を読み切ったこと、称えたいと思います。
旅先で手軽に読み返せる自分の一冊が欲しい方、Bankless Academy の今後の教材を支えたい方は、このエントリーの収集をお忘れなく。よい旅を、エクスプローラー。
Ethereum のトークン規格の FAQ
Ethereum のトークン規格はどう作られますか?
トークン規格は、Ethereum Improvement Proposals(EIP)という提案の手続きを通じて提案され、公開されます。投票はありません。提案は公開の議論の中で磨かれ、うまく機能するとコミュニティが広く認めた時点で、編集者が Ethereum Request for Comment(ERC)という規格として確定させます。そこに EIP の連番が付き、ERC-20 や ERC-721 のような名前になります。
ether(ETH)はトークン規格に沿っていますか?
いいえ。ETH は「トークン」ではなく「コイン」と呼ばれ、自前のブロックチェーンを持つことを意味します。
誰でもトークンを発行できますか?
はい。Ethereum はパーミッションレスなエコシステムなので、誰でも代替可能なトークンも代替不可能なトークンも発行できます。ただし技術的な知識か、ノーコードのツールが必要です。
同じ名前のトークンが 2 つあるとき、どちらが本物か分かりますか?
本物を見分けるには、使いたいトークンを発行しているコントラクトアドレスを調べ、プロジェクトの公式資料と照らし合わせてください。そうすれば、ウォレットを空にしかねない悪意あるトークンのコントラクトに触れずに済みます。
ERC-20、721、1155 のほかにも Ethereum のトークン規格はありますか?
はい。広く使われているものもあります。たとえば ERC-4626 は、DeFi で利回りを生む預け入れを表すボールトトークンの共通規格です。新しい規格には、ウォレット自身がコードを動かせるようにするスマートアカウントを扱うものもあります。一方、ERC-223、ERC-1462、ERC-1948 のように、広まらなかったものやごく限られた用途にとどまるものもあります。
著者
Musharraf は Unhashed の共同創業者です。Web3 のプロジェクトのコンテンツ戦略と実行を支援しています。
Tetranome は Bankless Academy のプロジェクトチャンピオンで、ユーザー体験、インターフェース、デザイン、コンテンツを担当しています。
編集
Trewkat は BanklessDAO のライター兼編集者です。暗号資産と NFT について学ぶことに関心があり、とくにその知識をどう伝えるのが最適かを考えています。
支援
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